メディア露出の功罪

From: 昌子 幹

僕の家から車で10分くらいのところに
小さなパン屋さんがあります。

数年前にたまたま通りかかった時には、
「こんなとこにパン屋があったのか」
と思うくらい地味な場所で
ひっそりと営業していたのですが、

試しに買って食べてみたところ、
これがとてもおいしい。

とりわけ、ワインとよく合うのです。

聞けば、店主がワイン好きらしく
必然的にワインに合うパンが
多くなってしまうのだとか。

素材にもこだわっていて
種類も豊富なので、

それ以来、そのパン屋さんに
頻繁に通うようになりました。

夫婦2人と従業員2、3人でやっている
こじんまりした店なので、
適度にコミュニケーションもあり
そんなところも気に入っていました。

ところが、、、

ある時を境に状況が一変します。

いつものように店に行ってみると
まず、駐車場に入れない。

めずらしく満車な上に、
道路脇にも待ってる車がいます。

「めずらしいな」と思いつつ
いったん家に帰ってから
自転車で出直すことにしました。

店の中に入ると、
案の定、混雑していて
見かけない店員さんが
レジの対応に追われていました。

そして、困ったことに肝心の
パンがほとんどなくなっていました。

わずか4、5種類くらいが
数個ずつ残っている程度。

「めずらしいこともあるもんだな」
と残念に思いながら、その日は
何も買わずに帰りました。

で、また別の日に行ってみたのですが、
また同じような状況。

「いったい、何があったんだろう?」
と思っていたところ、カミさん情報で、

どうやら最近ある地元のテレビ番組に
その店が取り上げられたらしいことがわかりました。

「そういうことか」

それからも何回か行ってはみたものの、
その後も品薄状態は続きました。

結局、次第にその店からは足が遠のき、
それ以来、そのパン屋さんで
パンを買うことはなくなってしまいました。

この経験を通して思ったのは
「メディア露出は諸刃の剣だな」
ということ。

以前、サバ缶の記事でも書きましたが、
メディアの影響力はやっぱり大きいです。

一度テレビや雑誌で取り上げられると
次の日にはもう品切れ状態になります。

コストもかからないので、
売る方にとってメディア露出は
新規客を集める
願ったり叶ったりの方法でしょう。

ただし、問題がないわけではありません。

まず、メディア露出をすると一気に
多くのお客さんが来るようになるので、
商品の供給が追いつかなくなります。

そこで、それを何とかするために
店側は新しい人材を確保します。

新しく入った人は、誰が新規客で
誰が常連なのか知る由もないので
どんなお客さんにも同じように対応します。

すると、常連客の足は遠のきます。
「常連なのに大切にされていない」
と感じるからです。

もちろん、その分を新規客で
カバーできればいいのですが、
メディアの効果もそう長続きはしません。

移ろいやすい新規客は
また新たな情報があれば
そちらに興味を奪われます。

結果として、瞬間的には売上が伸びたけど
その間に既存客は離れていき、

メディアの効果がなくなった時には、
売上は以前より減って、人件費だけが増えた、、、
なんてことになりかねないのです。

あ、勘違いしないでくださいね。

だからメディア露出はやらない方がいい
というわけではありません。

何度も言いますが、
新規客を集めるのには
やっぱり強力な方法ですからね。

マーケターとしてクライアントのために
戦略的にメディア露出を狙うのは
ありだと思います。

ただし、それによって既存客が
離れていっては意味がありません。

言うまでもなく、安定した売上と
利益を生み出してくれるのは
あくまで既存客だからです。

そして、新規客をファンにまで
育てるのには長い時間がかかります。

といったように、メディア露出は
とてもパワフルな方法ですが、
その反動もまたパワフルです。

なので、もしあなたがクライアントのために
メディア露出をサポートする場合でも
そのあたりのリスク対策を
十分に行なった上で行いましょう。

それでは、また。

昌子 幹

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