From:成澤将士
僕が板前修業をしていた23歳の頃、なかなかお客さんに料理を出せなかった。
というか、料理を作る許可を親方からもらえなかった。
僕は包丁を持ったこともない、まったくの素人で入店した。
だから、ずっと買い出しや仕込み、調理アシスタントや洗い物、発注や掃除、まかない作りなどなど、俗にいう「追いまわし」と呼ばれる見習いの時期があった。
入社してから半年ほど経ったある日の営業のこと、お客さんから揚げ物の注文が入った。
すると、「将士、お前これ作ってみろ」唐突に親方にそう言われた。
その時の心臓の高鳴りや急にかきはじめた嫌な汗は、今でもハッキリ覚えている。
これで合ってるよな?
恐る恐る作った料理を親方に見てもらう。
「うん、いいね」
「よし、お前明日から揚げ場(揚げ物のポジション)入れ」
そう言ってもらえた時は凄く嬉しかったし安堵した。
でも、それと同時に僕はこうも思った。
「こんな出来ない自分がお客さんからお金を貰って良いのか?」
「本当にこの値段を貰う価値があるのか?」
「僕が作った料理が店の格を決めてしまう」
それはそれは凄い恐怖感に襲われた。
それから僕は今まで以上に技術の習得に積極的になったし、先輩や親方の料理を盗もうとした。
なぜこんな昔話をしようと思ったか?
それは、駆け出しのライターあるあるで「価格の提示が苦手」というものについて、1つの答えがこの昔話にあるんじゃないかそう思ったから。
「で、いくらで書いてくれますか?」って聞かれたら、すらっと値段言える?
きっと言えないんじゃないかな。ちなみに僕は言えなかった。
そして、価格の提示が苦手な人は、営業トークを学んだり、価格表を用意したりする。
ちなみに僕もやった。
まあそれも1つの解決法だとは思うんだよね。
でも、自分で自分に「価値がある」って思っていないと、上辺のテクニックを学んでも
結局ダメなんじゃないかな。
だから、価格の提示が苦手なら、本当に思っている欲しい額を言えないなら、それは自分が自分にその価値を見出せていないことが原因なのかもしれない。
お金を貰うことは怖い事。そう思うのは悪い事じゃない。
だから僕は思う。
「自分で自分を認められる力をつける」
これが価格の提示で悩むすべてのライターに贈る答え。
一見遠回りに見えるかもしれないけど、これが一番の近道なんじゃないかな。
あなたはどう思う?