消えたサバ缶

From:昌子 幹

大好物というほどでもないのですが、
僕は昔からサバ缶をよく食べます。

独身で一人暮らしだった時はもちろん、
結婚してからも、かみさんがいなくて
一人でご飯を食べる時などは、

最も頼りになる相棒の一人
と言っていいでしょう。

熱々の白いご飯にサバの味噌煮、
そして、おいしいお酒があれば、
まぁ満足できるわけです。

ところが、ある日
スーパーに買い物に行くと
サバ缶が店頭から消えていました。

生まれてこのかた、
サバ缶の売り切れなど
経験したことがありません。

不思議に思いながらも
もう一軒のスーパーに行くと
そこも残りわずか。

「え?なんで??」

そう思ってよく見ると、
その棚の横には
「テレビで紹介されました」
のPOPが、、、

どうやら、何かのテレビ番組で
取り上げられたらしく、
その影響であっという間に
スーパーの棚からサバ缶が
姿を消したようです。

「またか…」

テレビで紹介されたとたんに
買い物客が押し寄せ、
その食材が店頭からなくなるのは
よくあることですよね。

でも、昔からその食材を好んで
食べていた人にとっては
えらい迷惑な話で、

自分だけが大ファンだった
マイナーなアーティストが突然
売れ始めてメジャーになった時のように
なんとも寂しい思いをするものです。

この時も、
「マスコミに踊らされる大衆め」
と一瞬イラっとしたのですが、

よくよく考えてみれば
誰よりも踊らされているのが
自分自身だったりするわけです。。

アマニ油やらヨーグルトやら
バナナやら、、、

テレビで紹介されるや否や
速攻で買いに走ったものは
決して少なくありません。

なんでこんなことになるのか?

実は、こういう情報番組を
よく見ているとわかるのですが、
コンテンツの作り方が
実にうまいんですよね。

例えば、この間も、
テレビをつけながら
朝の支度をしていると、

「洗濯物の生乾き臭は
部屋干しが原因ではない」

というアナウンサーの声が
聞こえてきました。

「なんだと!?」

思わず反応してしまいました。

取り立てて洗濯に興味が
あるわけではありませんが、
この言葉は僕の注意を引くのに
十分な力を持っていました。

「生乾き臭が大好き」なんて人は
まずいないと思いますが、

その生乾き臭は
部屋干しが原因だとずっと
信じて生きてきたからです。

その確固たる信念を
あっさりと否定されたわけです。

これは聞き捨てなりません。

「ほほう、そこまで言うからには
それなりの論拠があるんだろうな」

半ば喧嘩腰になりながら
僕は朝の支度を中断して
その番組の続きを見守りました。

要約すると、こんな感じです、、、

そもそも、生乾き臭の原因は
モラクセラ菌という細菌の
排泄物によるものだそうです。

この菌は皮脂や水分を餌にして繁殖するので、
洗濯から5時間も生乾きの状態が続くと
衣類が排泄物まみれになるそうです。

なので、臭いを防ぐにはこのモラクセラ菌を
排除しなければならないのですが、

この菌は、紫外線に強いという
特徴を持っているので、
外で干しても繁殖は防げないのです。

しかも、紫外線は
色あせの原因にもなります。

では、どうすればこのモラクセラ菌を
排除することができるのか?

1つ目の方法は、
モラクセラ菌の好物である
皮脂を洗濯の段階で取り除くこと。

皮脂は35度くらいから溶け始めるので、
洗濯する時に35度以上の
お湯を使えばいいのです。

もう1つは、モラクセラ菌
そのものを死滅させること。

モラクセラ菌は紫外線に強い一方で
熱には弱く、70度くらいになると
一気に死滅してしまうのです。

とはいえ、これはこれで問題があって、
35度のお湯を使って洗濯といっても、
そのお湯をどうやって調達するのか?

洗濯機に直結している水道は
お湯が出ないことも多いです。

お風呂の残り湯を使う
という方法もありますが、

近所迷惑になるので夜の洗濯は
控えたいという人も少なくないでしょう。

それに、
70度以上の高温といっても、
家庭用の乾燥機の温度は
せいぜい40度〜50度。

2〜3時間かけても乾かない
なんてことも少なくありません。

そこで、おすすめなのが
コインランドリー。

コインランドリーであれば
洗濯する時に、水かお湯を
選ぶことができますし、

乾燥も70度以上に設定できるので、
30分程度で一気に乾かします。

つまり、コインランドリーであれば
モラクセラ菌の食物である皮脂を除去し、

さらにモラクセラ菌そのものを
一網打尽にすることができるのです。

まぁ、うろ覚えの部分はあるのですが、
大体こんな流れだったかと、、、

この話を聞いて、その週末に早速
コインランドリーまで走ったわけですが、

それはさておき、お気付きの通り、
この話の流れは問題解決型の
コピーとほぼ同じ構成です。

1)ビリーフの否定
2)問題の原因の特定
3)競合の排除
4)解決策の提示と新たな問題提起
5)商品のプレゼン

といったように、実は、
情報番組のコンテンツを分析すると
コピーの勉強に役立つことが
少なくありません。

しかも、あくまで
情報提供が目的なので、
売り込まれている感じはなく

「いいこと聞いたな」
と観た人は満足します。

これを使わない手はありません。

そもそも、なぜテレビで紹介されると
あっという間に売り切れるのか?

単に商品を紹介しただけで
みんながこぞって
買い求めるはずがありません。

その裏には、相手の注意を引き
行動に促すまでのプロセスが
必ず存在しています。

そして、そのプロセスを分析することは
僕たちマーケターやコピーライターにとっては
とても大きな学びになるはずです。

何気ないテレビ番組でも
それを意識するのとしないのとでは
大きな違いが生まれるかもしれませんね。

では、また。

 

昌子 幹