僕が退職を決意した社長のたった一言

from 成澤将士

先日クライアントと話している時に、「なぜ人は会社を辞めるのか?」って話になった。

そこで、自分はどうだったかかなあと思い返した。

 

ちなみに僕は今の仕事の前は飲食店で働いていたって話は何度かしているから、あなたも知っているかもしれない。

当時僕は、売上アップや会社拡大のためにマネジメントのほかにマーケティングやセールスライティングの勉強を自腹でしていて、それをお店で試したりしながら腕を磨いていた。

 

でも、その頃は起業する気はなかったんだよね。

こうした勉強を始めた理由は「会社の役に立ちたい」って気持ちからだったから。

 

ちなみに当時僕はその会社ではナンバー2だった。

小さな会社で数店舗しかなかったけど、年間予算計画や人材募集採用、教育や査定評価、それに販促計画やメニュー開発などなど、全て自分が責任者だった。

まあそれなりにハードだったけど(ブラックともいう)、やりがいもあったんだよね。

実際に、過去最高利益を何度も更新したり、業界の中ではスタッフの定着率も相当高い方だったし、それなりに上手くはやっていたと思う。

 

ところが、そこから会社を辞めて起業しようと決断したのは、思い起こせば社長のたった一言が引き金だった。

 

その頃僕は、連日の無理がたたったのかメニエール病を発症してしまって、発作が出ると左耳が聞こえなくなったり、めまいで立っているのも辛い日がありながら働いている状況で、正直かなり参っていた。

 

この先どうしようかなあ、続けられるか不安だなあ。と悩みながらも、自分が辞めたら会社が大変なことになるなあとか、できたら担当を分散するか内勤に切り替えるとか、そういう建設的な方向で相談するしかないかなあ。

なんて考えながら、社長には病気のことを言うタイミングがないまま1ヶ月ほど働いていた。

 

んで、翌月の定例会議のあとに「ちょっと相談があるんですけど、、」と社長に告げ、時間を作ってもらった。

 

僕はこう切り出した。

「実は、辞めようか悩んでいまして・・・」

 

僕的には、今までのパフォーマンスが出せないことに責任を感じていたからそう切り出したんだけど、全然辞める気はなかった。

僕の頭の中では、驚いて色々聞いてくるであろう社長へ、最近調子が悪くて不本意な動きになっていることを伝えて、このままでは続けられないから給料下がってもいいので担当を分担するなり内勤に切り替えるなりして、退職をしないで済む方向で着地すればって考えてたんだよね。

社長は最初にインパクトを持ってこないと人の話をあんま聞いてくれないタイプだったし、そういう話の流れなら十分引き留めてくれるだろうって想定だった。

 

ところが、次の社長のたった一言で、僕は一気に冷めた。

 

彼は言った。

「え、いつ?」

 

ああ、僕もしょせん替えの利く歯車でしかなかったのか。

何のために頑張っていたんだろう。

もう魂を削りながら働くことはできないな。

と、僕は完全に心が折れた。

 

なので、そのまま事情も何も伝えることなく笑顔で希望日のみを伝えた。

 

もしかしたら彼には彼なりの考えがあっての一言だったのかもしれないし、僕には引き留めるほどの価値がなかっただけかもしれない。

 

残念ながら、その後色々言ってくれたこれまでの仕事への賛辞も引き留めの言葉も、僕には何にも響かなかった。

 

結局引継ぎやら引き留めやらでそこから半年ほど辞めるまで時間がかかったんだけど、おかげで今の仕事で起業するって道筋もできたので結果オーライ。

 

 

あの時の彼の最初の一言が「いつ?」ではなく、「なんで?」とか「どうした?」だったなら、僕がまだそこで働いている未来もあったかもしれない。

 

 

こうしたとっさの小さな一言であっても、人を深く傷つけることもあれば、逆にとても勇気づけてくれることもあるよね。

ほんと言葉って怖いんだよね。

 

僕もこれまで何度も苦い経験があるし偉そうなことは言えないんだけど、僕らのやってる仕事って言葉を扱うわけでこの恐怖はずっとついて回るし、いい意味で恐れをもっていた方が良いと思う。

 

でも僕らの仕事は幸いなことに、喋りと違って外に出す前に何度でも「手直し」ができる。

これは本当にありがたいし、だからこそいかに客観的な視点での見直しや編集が重要かってことなんだけどね。

 

 

ちなみにウチの会社は、取引先とのメールや問い合わせ対応、クライアントとのやりとりなんかは、担当者がいても返信前に必ず僕が文章チェックをするくらい気をつけてる。

相手がどう受け取るか指摘して考えさせて何度も推敲させたり、時には僕が加筆修正するから、1つのメッセージを返すのにむっちゃ時間かかるし効率は悪い。

だけど、文章を扱う会社としてここは手を抜くべきではないと思うし、社員の成長のためにも必要だからこれは止められないんだよね。

 

 

ということで、あの社長の一言からもうすぐ10年。

言葉の力の怖さを教えてくれて、そして今の職業に出合わせてくれて、今となっては感謝しかない。

いやー、ほんと人生万事塞翁が馬だね(笑)

 

 

では、今週もお互い頑張りましょう。

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