from 成澤将士
週末は記録的な暑さだったね。
こう暑くなると思い出すことがある。
あ、今日の話は特に学びとかないんで、忙しい人はスルーしてもらって大丈夫です。
それは今から7年前、コンサルで毎月1度、山形県のクライアントの所へ行っていた時の話。梅雨の中休みで暑い日だった。
いつもは新幹線で山形駅に向かい、そこへクライアントが車で迎えに来てくれるんだけど、その日はとあるイベントにブース出展しているのでそちらに来てほしいとのことで、山形駅からタクシーに乗った。
ドライバーさんは50代後半くらい。白髪交じりの角刈り風のがっしりした男性。目的地の施設名を伝えると、大きな声で返事をして走り始めた。
「お客さんはどちらからですか?」
「千葉県から来ました」
「千葉のどこですか?」
「浦安です」
「浦安?」
「ディズニーランドのある所です」
「あー、昔新婚旅行で行きましたよ。帰りの首都高で東北自動車道に乗れなくて何時間もグルグルして危うく離婚しそうになりましたよ(笑)」
「それは大変でしたね、、、」
ちなみに首都高の分岐は複雑すぎて、初見でカーナビなしで迷わずに行くのはほぼ不可能。
合流直後に300メートル先の分岐に入るのに3車線縦断とかあるから、助手席に乗った奥さんが地図を見ながらナビゲートするにしても難易度が高いし、言われてもタイミングによっては間に合わないし、そのうち険悪になる気持ちも分からなくもない。
「今日は○○(目的の施設名)のイベントですか?」
「そうなんですよ。お客さんが出展してるので様子見に行くんです」
「そうなんですか。お仕事は何ですか?」
「コンサルみたいなもんです。集客とか売上アップのお手伝いです」
こんな感じでドライバーさんと色々話しながら和やかな道中。
ところがそれから数分後、僕は一気にパニックになる。
それはタクシーが信号で止まった時だった。
タクシー会社から無線が入る。
「○○さん、乗務中ですか?」
「はい、お客さん乗せてます。成澤さんです」
「了解しました」
え!?
今、成澤さんって言ったよね?
色々話はしたけど、自分の名前なんて言ってないよな、、、
え、もしかして先月山形でやったセミナーに来てた人?んなワケないよなあ、、
どこかで個人情報が漏れているのか?
名前バレするような有名人でもないし、なんで名前がバレたんだ?
ってか、「了解しました」ってタクシー会社も知ってるの?
もしかして何かヤバいことに巻き込まれてる?
もしくはなんかのドッキリか?
頭の中は大パニック。
信号が変わり、車が動き出した。
またドライバーさんが話しかけてきたけど、もう会話はまったく頭に入らない。
能天気な大きな話し声も、ミラー越しにちょこちょこ僕と目が合うのも、なんらかの意図を感じてしまう。
なんだか世にも奇妙な物語の世界に飛び込んでしまったかのような、底知れぬ気味の悪さで一気に冷汗が噴き出してきた。
このままスルーすべきか?
しかし、プライバシーに関わることだ。このままというワケには行かない。
意を決し、ドライバーさんに切り出した。
「あの、なんで僕の名前を知っているんですか?」
「え、私お客さんの名前なんか知りませんよ」
ドライバーさんはミラー越しに僕を怪訝そうな目で見る。
ほう、しらばっくれるのか。謎の怒りがわいてきた気がする。ここで引き下がるわけにはいかない。
「さっき無線で、乗せてるお客さんを「成澤さんです」って僕の名前を言いましたよね?」
すると少し間を置いてドライバーさんがガハハと笑い出した。
「お客さん、さっき言ったのは地名ですよ」
「え、地名?でも成澤なら分かるけど、成澤さんってどういうことですか?」
「ちょうどさっきの交差点の信号が「成沢三」って丁名が入った名前だったんですよ(笑)」
「ああ、そういうことだったんですね・・・」
よくよく流れる景色を見ると「成沢接骨院」とか「成沢歯科」とか地名にまつわる看板が目に入ってきた。話に集中してて周りが見えてなかったんだね。
僕は安心するやら恥ずかしいやらで今度は冷汗じゃなくて普通に汗が噴き出した。
降りる時にドライバーさんに「成澤さん、頑張ってね(笑)」とおつりと領収書を渡されて、そりゃ弄るよねって思いながらタクシーを降りた。
イベント会場につくなりこの話をしたら、クライアントは大爆笑。
「ふだん通らない地域だから知らなくて当然ですよ」と優しくフォローしてくれたけど、ツボに入ったようでしばらくお腹を押さえてプルプルしてた。
普段冷静な僕がこんなことでテンパったのが面白かったらしい。
まあその後のイベントは上手く行ったし今となっては良い思い出だけど、ホント思い込みとか勘違いって怖いよね。
勝手にいろんなものがリンクしていって、あり得ない妄想までしちゃうんだもん。
予想外の事態が起きた時は、一呼吸おいて周りをよく見ないとダメね。じゃないと僕みたいに変な行動とっちゃうから(笑)
ということで、とある初夏の思い出でした^^;
では、今週も頑張りましょう!